2011年10月28日金曜日

第65回 和歌山県美術展覧会 開催中!


第65回 和歌山県美術展覧会 開催中!

和歌山県立近代美術館において、第65回 和歌山県美術展覧会が開催中です。

11月30日(日)まで美術館の2階部分で洋画・写真・彫塑が展示されています。
らくらく写真教室からも5名の受講生が写真部門に応募し、入選以上を獲得した4名の作品が展示されています。

写真も含めた美術品は実物をご覧になっていただくと、画像とは違う奥深い楽しみを感じていただけると思いますので、是非ご高覧ください。


[当会員の結果]
優秀賞:山下 健蔵  作品「眼 光」
佳 作:辻 有理亜  作品「円 網」
入 選:畑中 昭   作品「材の形象」


以下、らくらく写真教室の 講師 西山武志の寸評など

山下健蔵の作品「眼光」は写真部門の最優秀賞の次点にあたる優秀賞を受賞。
猛禽類である梟の鋭い眼をストロボで撮影し、緊迫感を感じさせる一瞬を巧みに表現したモノクロ作品。また、作品の力強さと仕上がりのクオリティは会場でも群を抜く水準といえるでしょう。


辻 有理亜の作品「円網(えんもう)」は優秀賞の次点にあたる佳作。
クモの巣をベースとした写真を撮影・分割し、再結合させることでストレートフォトとはひと味違うフォトアートとなった。とくに金属線のようにギラギラと光るクモの巣と美しい瑠璃色の背景が見るものに美しさを感じさせる。ただし、技法に頼ると難しい一面も。


畑中 昭の作品「材の形象」は入選を獲得。
畑中氏のフォトライフともいえる材(木)の作品を4枚の組写真で表現した。「これが材なのか」と驚かせる程に、個別の形象と色彩が交わるリアリズムフォトはまさに作品と呼ぶに相応しいレベルであるし、撮影ショット数と年月をかけている努力が見える。



[写真部門の展示作品をみて]

今回の第65回 和歌山県美術展覧会は従来からある実直な風景やスナップ要素の強い写真、さらにアートとして表現された作者固有のメッセージ性を重んじる作品などが入り乱れていました。

まず、風景写真の場合はその美しさが感動を呼び起こすほどに隙のないものは数少なく、受賞とまではいかない内容のものがたくさんありました。風景写真は主張という面で不利ではあるが今後に期待してみたいと思います。

次にスナップとその延長上にあるドキュメント写真は多くありましたが、美術・芸術という観点からすると、どうしても評価をする場合には曖昧になるポジションのものが多いので、食い合いになっていたように思います。その中でも組写真としたものはコンセプトが含まれているものもありましたが、やはり完成度の物足りなさ、時代性に頼るもの、組写真ではなく1枚で勝負したほうが良い結果が得られたであろうといえる作品もあり、惜しいと感じました。

そしてメッセージを訴えるのが真骨頂のフォトアート作品は、すこし技法に頼るところが難ではありますが、全体としての雰囲気はよかったと思います。インテリアのようにきれいな佇まいや、これはなんだろうと感じさせる部分などが、見るものの心境で変化する思考性などは見ていて面白かったと感じます。ただし、コンセプトが明確に見えないと、実は写真でなくてもいいように感じたり、審査員に作品の真意を理解されない脆さも内包することになるでしょう。


[少し考えてみて]

コンテストの審査基準など。
これは審査員の経験や知識による言葉の説明と理解力、さらに言葉を必要とさせないくらいの感動がある作品。もうひとつあるならば流行性なども含まれるでしょう。そして審査員が押せば通ることも多いと思います。

もちろん、これは「公正で厳格な審査」が行われていることが原則となりますし、そうでないなら審査から降りるべきことでしょう。応募する人はそれ以上に真剣ですから。

個人的には今年度の写真部門の受賞作品は例年よりは悪くはないと感じました(受賞作品は同じようなトーンの写真が多いですが)。しかしながら全体としての写真部門に元気があるかと言えばあまり元気だとは感じないところもありました。

どうも活力やパッションを感じないというべきか。

これは和歌山の写真界のリーダーとして、県の関係者や審査員が公正に芽のある作品を評価できる体制なのか、芸術としての写真に明確な指針を示せているのか、というところに疑念を抱くことでもありました。

実際に私の生徒さんは昔は20名近く応募していましたが、本年度は5名しか応募がありません。

これは凄い減少です。

それは何故なのか。

関係者はこういった理由をもう少し親身に理解し、見定める必要があると感じました。